業務委託契約のトラブルを回避する方法

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椿

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業務委託契約書を作成する際、ネットのテンプレートを流用してはいないだろうか。業務委託契約には、請負契約準委任契約の2種類がある。しかし、明確に区別されず業務委託契約として締結してしまいがちだ。そのような曖昧な契約はトラブルの元になるため、違いを理解し契約内容を明確にすることが非常に重要だ。この記事では、請負契約と準委任契約の違いを解説する。

1、業務委託とは

「業務委託」とは、企業が自社の業務の一部、または全ての業務を外部の企業に依頼することです。「委託」とは、業務などを他者に依頼すること全般を指し、アウトソーシングとも呼ばれています。

業務委託の定義とは?請負契約と委任契約の違いと契約時のポイント|Adecco

2、業務委託契約書はなぜ重要なのか

業務委託契約は、その性質上、契約内容を明確にする必要がある。

「業務委託契約」は、民法その他法律で定められたものではなく、「業務委託契約」という契約形態は存在しない。一般的に「業務委託契約」と呼ばれている契約は、「請負契約」か「準委任契約」、若しくは両者を混在したものであることが多い。

契約を巡りトラブルが起きた際には、まず契約書の内容に従い、契約書に記載がない点は法律に従って判断する。このとき、請負契約なのか準委任契約なのかを判断するのだが、業務委託契約には様々な要素が含まれており、判断が難しい場合が多い。請負契約と準委任契約では成果に対する責任の所在が異なるため、この判断は大きな争点になり得る。

あなたが依頼者であっても依頼される側であっても、契約内容を明確にしておくことが非常に重要なのだ。

3、請負契約と準委任契約の違い

3、1、請負契約

第六百三十二条 請負
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法第三編第二章第九節|e-Gov法令検索

請負契約は、業務を完成させることを目的としている。業務の完成または成果物と引き換えに、注文者から報酬が支払われる。業務が完成されなかったもの、または業務は完成したが成果が出なかったものには、本来対価は発生しない。注文者は、業務が完成しない間はいつでも契約を解除できる。

契約不適合責任
請負人は、注文者から求められた通りの成果を提供しなければならない。欠陥があった場合、注文者は、修正や追加作業、報酬の減額、損害の賠償、契約の解除をすることができる。

契約不適合責任に関する民法改正
【改正前】
・第634条・第635条に、成果物に瑕疵があった場合の注文者の請求権を定めていた
【改正後】
・第562条(追完請求権)・第563条(代金減額請求権)・第564条(損害賠償請求権・解除権)を第559条を介して準用
・第564条が準用する第541条・第542条(契約不適合を理由とする解除)を第559条を介して準用
・第634条・第635条を削除
・第634条に報酬について、第636条に契約不適合責任についての補足を追加

3、2、準委任契約

第六百四十三条 委任
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

第六百五十六条 準委任
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

民法第三編第二章第十節|e-Gov法令検索

準委任契約は、一定の事務処理行為を行うことを目的としている。受任者は業務に対して最善を尽くす義務を負うが、業務を完了させる義務、成果を上げる義務はない。ただし、委任者の請求があった場合と、委任が終了した後には、作業報告をする義務がある。委任者・受任者の両者は、いつでも契約を解除することができる。

報酬を支払うタイミング
【通常】
委任した業務が完了した後(医師の診察、塾の講義など)

【委任期間を定めた場合】
定めた期間が経過した後(顧問契約など)

【成果に対して報酬が支払われる場合】
成果と引き換え
※IT系の開発業務でこの形態が必要な場合がある

4、請負契約・準委任契約の注意点

請負契約は作業報告義務がない
請負契約では、業務の完成が義務付けられている。欠陥があれば修正させ、完成するまで報酬を支払わなくてよい。そうは言っても、期日を守って作業してもらわなければ、注文者は次の作業が始められず困ってしまう。請負人は途中経過を報告する義務もないため、注文者は作業の進み具合も分からない。注文者は、納期を守ってくれる請負人に依頼しよう。

準委任契約では成果を上げる義務がない
準委任契約では、受任者は最善を尽くす義務はあるものの、委任者の望む成果を上げる義務はない。業務完了後に不備が発覚しても、委任者は受任者に責任を取らせることができない。委任者は、誠意や意欲を持って業務を行ってくれる受任者に委任しよう。

依頼者側には指揮命令権がない
業務をどのように行うかは依頼を受けた側の自由であり、依頼者側がやり方を強要することはできない。依頼する際には、作業の段取りやスケジュールを自分で考えられるスキル・経験を持っているかを確認しよう。
また、社内に常駐する形の業務委託では依頼者側が指示を出してしまいがちだ。その場合、雇用関係が生じているとみなされると、「偽装請負」となり法律違反になってしまう。指示を出しながら業務をさせたい場合は、雇用契約を結ぶか人材派遣を活用しよう。

【Point】最初に請負契約か準委任かを決めよう
最初に業務内容を洗い出し、請負契約・準委任契約のどちらに該当するかを明確にしよう。一般的には、納品物がある場合は請負契約とされる。サービス業は準委任契約とされることが多いが、「試験に合格させる」などの決められた成果がある場合は請負契約となる。

請負契約では、作業を完成させる義務がある請負人に大きな責任が生じる。準委任契約では受任者にその義務がなく、業務に不備があった場合は委任者が損失を被るリスクがある。最初にどちらの契約になるかを決め、法律に従って契約の条文を構成していくと良いだろう。

5、まとめ

業務委託契約は請負契約準委任契約を包括している。請負契約は、例え無形のものであっても仕事の完成が約束される。準委任契約は、受任者が最善を尽くせば成果は関係ない。単純に「業務委託契約」としてしまうと、依頼をする側であっても依頼を受ける側であっても、トラブルがあった際に被害を被る可能性がある。信頼できる相手と契約を結ぶことが大前提であるが、契約内容を明確にすることが非常に重要だ。

また、依頼者は指揮命令をする権利がない。請負人・受任者には、必要な作業を洗い出したり作業計画を立てられるスキル・経験が必要だ。プロとして最善を尽くす(やってはいけないことをしない)など、一定の知識も求められる。依頼者は、それを考慮して依頼する相手を選定しよう。

SOURCE
民法|e-Gov法令検索
業務委託契約書の解説2(請負と委任の違い)|ヒルトップ行政書士事務所
業務委託契約についての注意点|弁護士法人阿部・樽原法律事務所
民法改正による新制度(第2回)-請負契約|J-Net21
準委任契約|ITmedia