チームリーダーに教えたい良いチームの育て方

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椿

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チームをまとめるコツ

1、チームのモチベーションを上げる

自身の内面に沸き起こった興味や意欲が課題遂行の動機となることを「内発的動機付け」という。内発的動機付けは、「自律性」「関係性」「有能感」の3つの欲求が満たされた時に引き起こされる。すると、報酬や評価が見合わない場合でも高いモチベーションが発生する。

自律性
自分の行動は自分で決めたいという欲求を指す。人は、自分で選んだ感覚があるほど業務が楽しくなり、指示が多いほど会社の歯車になったように感じて業務がつまらなくなる。業務に関する選択権は可能な限り部下に与え、就業時間、作業場所、作業の優先順位、作業の手段、自身の目標などを部下が選べるようにする。指摘や助言をしたいときは、なぜそのやり方に変えると良いのかを伝え、やり方を変えるかどうかは本人に任せるようにする。やり方を変えなかった場合は、その後不利益を被った際に振り返りと反省をさせ、次回に最適な選択ができるようにしておく。

関係性
自身の行動を周囲と関連づけ、他者のために行動したい・信頼し合いたいと思う欲求を指す。そのため、チームでは良好な人間関係を保つことを心がける。また、人は信頼している人の話ほど素直に聞き入れる傾向があり、関係性が満たされていないと指摘や助言を部下に受け入れてもらえなくなってしまう。一言声を掛けるなど部下を気にかけていることをアピールすると、部下はやがて信頼し返してくれる。お互いの信頼し合った環境を目指そう。

有能感
自分は有能で現場に貢献できているという感覚を指す。この感覚は、自律性が満たされ、業務の難易度が最適なときにもたらされる。有能感を感じて仕事に夢中になっている状態は「フロー体験」と呼ばれ、「フロー体験」ができる環境が内発的動機付けを最も高めることができる。

リーダーの心得
組織は指揮命令による従属関係を持つことが多く、従業員の成長を阻む環境になりやすい。リーダーが成果を求めて高圧的になればなるほど、管理の色が濃くなりチームの自律性が失われていく。それを防ぐためにはルールを最低限に抑えることが効果的だ。
また、リーダーとチームメイトに上下関係はないことを意識する。上下関係を意識すると「チームをコントロールしたい」という欲求が生まれやすくなってしまう。リーダーは責任のある立場ではあるが、チームの代表という役割を担当しているだけであり、立場が上というわけではない。

2、強いチームを作る

従業員はチームをより良くするために、チームが抱えている課題を知り議論したいと思っていることが多い。そのため、リーダーが課題を共有すればするほど、業務に真摯に向き合い課題解決のために自ら行動するようになっていく。

チームの課題を共有するときのポイントは協力を求める姿勢でいることだ。リーダーは、部下を信頼している、部下の提案にも耳を傾ける姿勢であることを部下に認識してもらう必要がある。「みんなで一緒に問題を解決しよう」という姿勢が望ましい。
また、課題を共有するときはネガティブさを強調し過ぎないようにする。課題を共有するのは生産的な行動を促すためであり、危機感を煽る必要はないからだ。代表的なNG表現は「毎回上手くいかない」「全てダメ」「不可能」「業務が崩壊する」「打撃を受ける」「大きな損失」「リスクが計り知れない」「致命的な」といった抽象的な言葉だ。事実に基づき具体的な表現を使おう。

部下の提案や他社のアイデアを積極的に採用するリーダーは、部下の信頼を得られることが多い。リーダーが弱みを相談したり提案をすんなり受け入れたりしていると、部下は「自分はリーダーに頼られる有能な人間だ」と思い、承認欲求が満たされるからだ。このとき、部下に感謝の気持ちを伝えるとより効果が得られる。そのうち段々と自分たちのやりたいようにチームを運営できるようになっていくため、決められたルールに嫌々従っていたときよりモチベーションが上がっていく。

3、挨拶をする

チームで話しかけやすい雰囲気を作るには、挨拶をすることが有効だ。挨拶をしない社員にはマイナスの先入観が働き周囲は非協力的になり、挨拶をする社員には周囲は協力的に関わるようになる。このように、挨拶はチームの連携に大きな影響を与える。
距離を感じる相手には挨拶をすると良い。挨拶の後に一言付け加えると雑談に発展させやすく、段々と仲が深まり仕事もスムーズに進むようになる。

【導入事例】
無印良品の株式会社良品計画は、大きな赤字を抱えていた時期に朝の挨拶運動を取り入れた。すると社員が自発的に挨拶をする習慣が生まれ、社風が変化していった。その後、業務改革を成功させることができ、業績を回復させている。

4、業務を教える

部下が未経験の業務を教えるときは、業務を小さな工程に分割して教える。こちらが手本を見せ、部下にやってみてもらい、無事にできたら次の工程の手本を見せる。言葉での説明は少なめにし、やって見せればその場でマネできるくらいの工程に分割して、一つ一つ実際にやってみてもらう。部下も、新しいことができるようになる達成感を何度も味わうことができ、モチベーションの維持につながる。

このとき、業務全体の流れやその工程の役割も伝える。「このボタンを押せばいいから」などと操作方法を教えるだけではなく、どんな業務の一部なのか、操作の結果何が起きるのかなどを説明しておく。すると理解が捗り、その後の工程の飲み込みが早くなる。資料作成の場合は、どんな場で誰にどのように報告するものなのかを説明しておくと、こちらが期待している成果物とのズレが減る。

また、「なぜそれをするのか」を考えてもらう。操作方法を覚えるだけでは思考停止していても業務ができてしまうため、成長の機会を失ってしまう。「なぜそれをするのか」を考えるようになると「ならば別のやり方でもいいじゃないか」「やる必要はないじゃないか」といったことに気付き、より良い方法を模索して成長し続けることができる。

5、良いところを褒める

たとえ出来がよくなくても、改善点を指摘するのではなく、やったことに対して感謝したりできるようになった点をほめたりする。すると相手は自然とやる気が湧き、「またやろう」と思うようになる。ダメ出しをすることで失敗を防ごうとすると、失敗を恐れたり不安になってしまうようになる。失敗を防ぐことよりも、個人の持っている良い部分や成長に意識を向けると、前向きになりスキルアップも期待できる。
改善点を伝えるときは、上述に付け加えて「更にこうしてくれたらもっとよくなる」と言う。「でもここはできていないね」という言い方は避ける。

【例】部下が議事録を取ってくれたとき
×「内容がはっきりしないじゃないか。まだまだ業務への理解が足りないな」
〇「入社した頃より業務への理解が深まっているね。ありがとう!」

6、先入観があることを知る

人は他人の失敗から能力を量ろうとするとき、その人の置かれた状況よりもその人の気質を重視してしまう傾向がある。しかし、自分の失敗に関しては状況を重視し、自分とは関係のない要素が原因だと考えてしまう。この先入観があると、周囲や自分の能力を正しく認識できなくなってしまう。
この先入観は、「私たちの脳はこのような考えの歪みを起こす傾向がある」と認識すると取り除くことができる。周囲の人が起こす失敗や不運な出来事には、それを避けられない事情があり気質とは無関係な可能性がある、ということを考慮するべきだ。

【先入観がはたらいている例】

遅刻をしたとき
同僚に対して:チャラそうな奴だからどうせ時間にルーズなんだろう
自分の場合:今日は雨だから仕方なかったんだ

プレゼンで機材トラブルがあったとき
同僚に対して:地味そうだからどうせ操作ミスでもしたんだろう
自分の場合:プレゼン前に珈琲が飲めなかったから調子が出ないんだ

資料をなくしてしまったとき
同僚に対して:ふわふわした喋り方だから書類の管理ができないんだろう
自分の場合:あの時部長に話しかけられたからなくなったんだ

7、期限を守らせる

仕事の期限を守らせるには、あらかじめ「期限の数日前に状況報告をする」と決めておくとよい。するとチームのメンバーは、例え事前の報告であっても進捗が全くない状態は避けようとするため、ある程度の進捗が見込める。事前時点で進捗が遅れていることが分かればフォローをすることもできる。
「進捗が遅れる場合はそれが分かった時点で報告する」というルールも作っておくとよい。このルールを定めておくと、期限になって「進捗が遅れていて間に合いませんでした」と言い訳することができない。そんな言い訳をしてしまったら、期限に間に合わなかったことに加えて、ルールを守らなかったことまで叱られてしまうかもしれない。そのため、事前に素直に進捗遅れを報告するか、期限に間に合わせようとするようになるのだ。
もし期限に遅れてしまった場合は、なぜ期限が守れなかったのかを考えさせる。期限を守れなかった際にリーダーが何も行動を起こさないと「期限を守れなくても気にしなくていい」という雰囲気を作ってしまう。守るのが当たり前という雰囲気を作るべきだ。

8、無駄な業務を減らす

資料作成のうち、時間のかかるまたは複数人の人手が必要なものは、簡素化や廃止をする。まず、「30分以上または3人以上を必要とする文書作成業務」などと条件を決めて、該当する作業を洗い出す。四半期の間、試しにその作業を簡素化・廃止した状態で過ごし、マイナスの影響がなければそのままにする。もし簡素化・廃止に上層部の賛同が必要な場合は、これによって削減できる時間を具体的に伝えると効果的だ。

作業の洗い出しは定期的に行うと良い。週次や月次の定例会議で不要な作業や複雑化している作業を持ち寄り、対処法を考え実施する。そして投票や計測を行って効果を競い、最も効果的だった提案をした者には報酬を与えても良い。その結果、部下のモチベーションにつながることが大切だ。

9、迅速な意思決定をする

意思決定をするときは、制限時間を設けその時間内に全員の意見が一致しなければ、リーダーが決めるか投票を行う。意思決定に関与する人数が多いほど視点が増え、合意を取ることが困難になる。この方法で、意見がまとまらない事態を避けることができる。

10、チームの認識のズレをなくす

チームのみんなが当たり前だと思っている物事に対して、少しでも疑問を感じたらその意味について確認をする。「今更何を言っているんだ」とも思われかねないが、チームに問題が起きているときは、このような初歩的な部分や大前提の認識が合っていないことが多い。「そもそも何故だっただろうか」といった疑問は、「誰も質問しないからみんな分かっているのだろう」とみんなが感じ、認識をすり合わせることなく進んでいくことがよくある。
また、質問の頻度が高いと「自分で考えない怠惰な人だ」と思われる可能性がある。質問の次に自分なりの意見を添え角が立たないようにする。

【質問例】
「すみません、その用語は具体的にどういう意味ですか?」
「理解不足で申し訳ないのですが、このプロジェクトの目的はなんでしたっけ?」
「すみません、一応確認なのですが、なんでリニューアルが必要なんでしたっけ?」
「初歩的な質問なのですが、「健康的な美しさ」って具体的にどういうことですか?」
「ところで、どうして研究開発部門とマーケティング部門で協力するんでしたっけ?」
「このプロジェクトって、ターゲットは女性だけなんでしたっけ?」

11、意見交換をする

チームのメンバーが、誰かに自分の話を聞いてもらい考えを整理できる時間を設ける。この時間は「壁打ち」といい、助言を求めることが目的ではない。例えば、1つのアパレルメーカーでも、ブランドごとにターゲットが異なりブランディングやマーケティングの内容は異なる。企業としての最終的な目標は同じであっても、そこに向かう途中経過は全く違っている。自分と異なる視点でものを考えている人に話を聞いてもらうことで、新鮮な感想が得られ考えが洗練されていく。

壁打ちの相手は、社内の自分と異なるチームのメンバーなどで良い。自分と同じ業界知識は持っていて話は通じるが、こちらの業務内容は知らないため先入観がない人物が理想的だ。ランダムにグループを作って、企画やプレゼンなど、それそれが考案していることを説明し、意見を聞く場を作ると良いだろう。このとき、聞き手は偏見や先入観を持っていないため、素朴な疑問や無責任な意見を言ってくる。遠慮なく本音を言ってもらうことで、偏見や先入観に気付くことができる。

もらった意見は必ずしも取り入れなくてよい。また、取り入れる場合は相手から許可を取るルールにする。意見を取り入れた結果成功しても失敗しても、責任は意見を取り入れた者にあるからだ。意見を言った側が「アイデアを盗まれた」、意見を取り入れた側が「あいつのせいで失敗した」と言い出し、トラブルになることを避ける必要がある。

【意見の例】
「なんでターゲットは女性だけなの?」
「本当に男性はこの商品を使わないの?決めつけてない?」
「男性をターゲットにしちゃいけない理由があるの?」
「男性が使わない理由が全然納得できないんだけど」
「それ、あなたがやりたいだけじゃない?ニーズあるの?」

【湖池屋の事例】
湖池屋の社長としてキリンビバレッジから招かれた佐藤章さんの改革の1つに、「壁打ちの活性化」がある。従来は1人が1つのブランドを担当していたが、佐藤さんは1人が複数のブランドを担当するように組織体制を変えた。担当者は必ず誰かと喋って業務に就くことになり、自然と壁打ちが起こる環境になる。

12、対立を解消する

チーム内で衝突が起きると、敢えて騒がないようにして自然消滅を図ることがある。表面的に調和を取って放置したり、話し合いの場を設けても自分の意見を言わないことが多い。このように対立の解消から逃げていると、次第にエスカレートしていき信頼関係が失われていく。対立は解消する必要がある。

対立は主に、認識のズレによる仕事に対する意識の違いで起こる。そのため、チームの最終的な目標を明確にすると防ぐことができる。これは、「月に20件納品する」といった定量的なものではなく、「その結果、顧客満足度を〇%上げる」などの成果目標のことである。「数値を達成すればよい」というだけではなく、「何のためにその数値を達成したいのか」を合わせる必要がある。

以下の8つの質問は、「チームの最終的な目標」を擦り合わせる際に役に立つ。【1】~【4】では目標設定、【5】~【8】では方針の擦り合わせを行う。今回は「あなた」は「チーム」を指している。最初は個別で思いつくままに書き出し、その後回答を持ち寄って認識を揃えていく。

【1】あなたの目標はなんですか?
  →「~しない」という目標は「~する」に言い換えさせる
【2】目標を達成したことはどのように判別しますか?
  →定量的な目標を立てさせる
【3】あなたの目標は、いつ・どこで・誰と達成しますか?
  →目標達成時の状態を具体的に想像させる
【4】目標を達成したらあなたの人間関係や周りの環境はどのような影響を受けますか?
  →目標達成のメリットや証拠を考えさせる
【5】目標を達成するために、あなたが既に持っている強みや経験はなんですか?
  →目標達成のための手段やスケジュールの根拠にする
【6】現在目標達成のためにやめるべきものはなんですか?
  →人付き合いや私生活に関連したものなど阻害要因を認識させる
【7】目標を達成することにどんな意味がありますか?
  →目標達成の価値を認識させる
【8】まず何から始めますか?
  →目標の計画を立てさせる

13、新しい発想を促す

商品のリニューアルや新商品の開発の際、これまでの商品に対する大前提が先入観を引き起こし、アイデアの創出を妨げていることがある。その可能性がある場合は、その大前提を除外した設定を考えさせると、新しい発想を促すことができる。商品の方向性が損なわれてしまうようにも思えるが、除外しているのは一部の要素に過ぎないため、大きな影響はないことが多い。

【例】コスメメーカーの新商品開発
「本当に○○は必要ですか?」
→「本当に新商品に「より美しくなる」という要素は必要でしょうか?」

「○○を除外してみるとどうなるでしょうか?」
→「これまでの商品から「美容」の要素を除外してみるとどうなるでしょうか?」

「○○ではないものは考えられないでしょうか?」
→「美容製品ではないものは考えられないでしょうか?」

「XにあえてYを入れるとどうなるでしょうか?」
→「商品にあえて「娯楽」の要素を入れるとどうなるでしょうか?」

もし+架空の条件
→「もし男性をターゲットにしたらどのようなアイデアがありますか?」
  「もし家からほとんど出ない世界になったら製品をどのようにリニューアルしますか?」

【事例】スマートフォンの開発
要望:ガラケーのボタンをもっと押しやすくしてほしい
 →本当にボタンが必要なのか
 →本当に求められているのは「使いやすさ」だ
 →ボタンの有無は関係ない
 →タッチスクリーン型を採用